◇ 桃取物語 Vol.1 ◇

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 おじいさんとおばあさんが家に帰ったのはほぼ同時であった。
 まず最初についたのはおばあさんの方であった。おばあさんは早く桃が食べたくて、急いで穴あきできゅうりがひっつかないこれぞ文明の利器といえる包丁を取り、桃を切ろうとした。そんな時に、おじいさんは帰ってきたのである。おばあさんはあからさまに『ヤヴァイ!!』という顔を浮かべた。おじいさんは叫んだ。
「ばあさん!! またいらんものを拾ってきおってからに! お前洗濯物はどうしたんだよ!!」
「ち…違うっ!! 違うのよ造(ひろし)!!」
「造って誰!?( ̄Д ̄;) あっ…そ…それは!! 桃ではないか!!」
「あっ…造ってのは…ねっ!?(営業スマイル¥0) そ…それよりその子供は何なの!? もしかして田中さんとの隠し子!?」
「た…田中さんとは何もないと言っとろうに!!(;゚Д゚) それより桃じゃ!! 桃を切るのじゃ!!」
「これは私が拾って来た桃じゃ!! 田中さんと浮気するような奴には渡さんぞ!!」
「わかったよ話すさ…田中さんとは……」
「あ!! じいさんや!! その片手の糸は何だい!?」
「これか? これはこの子供が持っておったのじゃ。それで田中さんは…」
「田中ぁ? 誰だいそれ? まさかあんたの新しい浮気相手じゃなかろうね!?」
「いや… もういい…(|||´_ゝ`)」
「っていうかあんたその子供が糸を持ってたからさらってきたのね!! それならそうと早く言いなされ!! それなら隠し子かとも思わずにすんだじゃろうに…」
「桃は切らんのかね?」
「そうじゃ桃じゃ!! 桃を切るぞ!! じいさんや手伝っとくれ!!」
 そうして桃を切ろうとした二人だったが、いざ包丁で切るとなんと中には男の子がいたのであった。
「あ…赤子じゃ!!」
 おじいさんはそう叫んだが、おばあさんには聞こえていなかった。おばあさんはその時、別のものをみていたのである。
「桃が…!!」
 おばあさんはまるで今日世界が滅んだかのような顔でそう言った。おばあさんの視線の先には桃が、いや、正確にはその男の子によって食べつくされた桃の残骸があった。
「わ…私の桃……」
 おばあさんは鋭い目つきで男の子を睨んだ。一体どのように桃を消化したのか不明だったが、そんなことをおばあさんが考える余地もなく、またボケたおばあさんはそんなこと普段から考えもしなかったのである。
 こうして男の子はその老夫婦と一緒に暮らすことになった。おじいさんとおばあさんは、その男の子のことを『桃食い太郎』と名づけ、おじいさんはそれはそれは大切そうに育て、おばあさんはそれはそれは可愛がりながら、しかしあるときはまるで親の敵を見るかのような目つきで睨みながら育てた。
 そういえば忘れられかけていたおじいさんが持って帰ってきた女の子は、実際おじいさんとおばあさんはさっぱり忘れていたが、かぐや姫と名づけられた。

 To be continued (?)

※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件、あるいは平安初期にできた日本最古の作り物語や皆がよく知っていて絵本などにもなっている有名な昔話などにはいっさい関係ありません。

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